ユートピアノ:屋号の由来

2013.10.10 23:40

『四季・ユートピアノ 』
私の生まれる2年前、1980年にNHKで放送された映像作品です。主人公はピアノ調律師の女性。音を通じて、ひとりの女性の内面・記憶がフィルムに映されているような、映像詩。
と、普通に説明しようとするとそうなんですが、乱暴な言い方かもしれないけれど、私は映画はあらすじじゃないと思っています。例えば同じ脚本を何人かが撮ったら、それぞれ全く違うものになる。その違いに、作る人の個性が出る。あらすじ以外、つまり行間に詰まっているものは、監督はじめ作り手の強さや優しさや人間性なのだと思う。こんなに何にも似ていないものを生み出すのはどんなに大変で苦しいだろうと思うのに、印象はとてもきれいで優しい。映画に限らず、見た目には美しいもの・楽しいものであっても、誰の真似もしていないものや、(奇を衒うのでなく)時代に逆行しているもの/人は、私には一人デモみたいに見える。
活版印刷屋を始めるにあたって、ただパソコンやオフセットのものを活版に置き換える、という店にしたくなかった。私が『四季・ユートピアノ』に感じたようなものを作りたい。そう思って、監督の佐々木昭一郎さんにお手紙を書いた。佐々木さんからのお返事は「どうぞお使い下さい」そして「そのチャレンジに拍手、送ります」。とても嬉しかったと同時に、大好きな作品の大切な言葉を頂き背筋が伸びた。
ユートピアノの名に恥じぬものを作れるように。明日も手をインクで真っ黒にして仕事しよう。

 

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